IT業界の世間的なイメージとして帰れない、給与と労力が比例しないというものがあり、実際に検索エンジンでITと入力すると「ブラック」という言葉が検索のヒントに出てくることが多々あります。
実際に、オンラインのアンケートで「ブラックな業界はなにか」のイメージ調査ではIT業界・情報通信業界は毎回上位に入っています。
その一方で「楽しい」、「やりがいがある」といった声が多いことも事実です。
この記事ではなぜIT業界がブラックというイメージが強いのかということに加えて、ITブラック企業が蔓延っている理由について紐解いていくとともに、IT業界で仕事をする楽しさをお伝え致します。
IT業界のブラックな部分
IT業界で働いている身として非常に残念で、また反省するべき点ではありますが、IT業界にはかなりの数のブラック企業、ブラックプロジェクトが存在します。
また、深夜勤務や徹夜残業が多いことも事実です。
しかし、皆さんにこの業界のことを誤解をしてほしくはありませんので一つ一つ説明するとともにその説明にあるような会社やプロジェクトはブラックである可能性が高いということを注意喚起致します。
なぜIT業界はブラックというイメージがあるのか
なぜIT業界はブラックというイメージがあるのか
IT業界がブラックというイメージが強いのは、幾つも理由がありますが第一に出てくるのは勤務時間の長さです。
就職や転職の募集要項で「残業40時間程度」という言葉を目にする機会は多いかと思います。40時間は実際にIT業界では少ないと思われる方ですが、一般的にはそれなりに高稼働です。それを「程度」という言葉で済ましてしまっており、残業に関する意識の欠如が見られます。
この他にも「労働基準法は知らない国の法律だ」、「IT土方」と言ったフレーズがそれに輪をかけています。
サラリーマン川柳をオマージュした「ITブラック川柳」なるものが存在して、かなりの共感が得られていることもブラックなイメージを加速させている一因ではないかと考えています。
ゲーム業界もひと昔前までかなりブラックな印象が強かったかと思います。最近ではかなり改善されて来てはいますね。ゲーム業界に求められる人材については以下にて解説しています。
ゲーム業界といえばかなりの数のエンジニアが憧れる世界です。 エンジニアに「IT業界に入るキッカケを教えてください」と聞くと「ゲーム」と答える人が多いです。人気シリーズの作品のスタッフロールに自分の名前が載ったときには鼻が高いでしょう[…]
IT業界にブラックプロジェクトが蔓延っている理由
IT業界にブラックプロジェクトが蔓延っている理由
IT業界のプロジェクトの主流としてアウトソーシング(他の会社に開発を任せる)、構内受託(ビジネスパートナーと社内で開発する)、SES(エンジニアを他社に派遣する)があります。実際に自社開発をやっていて自社の人員のみで完結させているプロジェクトは殆どありません。
それ自体には問題がないのですが、ブラックプロジェクトの原因として多重請負構造にあります。
多重請負とは、1社が請け負った案件を別の会社にアウトソーシングをして、それを請け負った会社が更にアウトソーシングするといった請負や委託の多重化をしていることを意味します。
この一番の問題点は末端の会社の開発費用や開発時間が確保されていないということになります。
そうすることで末端にいる開発会社は低予算かつ短納期でプロジェクト遂行しなければならず、少ない人員で回さなければならないために一人の負担が多くなっています。
この問題が大きく取り沙汰されたのはここ最近だと銀行のシステム開発になります。
「現代のサグラダファミリア」「現代のクフ王ピラミッド」など色々例えられていましたが、一部では7次請負まで発展しており、その結果「月間労働時間が300時間」や、「4カ月勤務で年間の残業上限を超えてしまった」と言った事例が多々ありました。
残念なことにIT業界は何十年もこのスパイラルを繰り返しており、改善する傾向にはありません。それはどこに根本原因があるのか分かっているにも関わらず、元受けの力の大きさや社会的地位の大きさにより黙殺されているのではないかというのがIT業界で働いている身として考えられる原因です。
ブラックを連想する言葉に騙されてはいけない
これまでIT業界のブラックな一面を書いてきましてが、これらブラックなキーワードに騙されてはいけません。ブラックなプロジェクトで過酷な労働を強いられることもありますが、その大半は少し事実を盛っている部分もあります。
例えば深夜に仕事をしているとはいっても、深夜シフトでメンテナンスが行われていたりもします。皆さんは携帯でゲームをやったことがありますが、そのメンテナンスは大体深夜に行われています。それは予定されていたものであり、別にブラック企業やブラックなプロジェクトという訳ではありません。
また徹夜残業もしなくては社会が止まってしまうケースもあります。例えば金融機関のシステムがストップした場合、大至急普及をしなくてはなりません。そのため、ピンポイントで徹夜残業が発生したりすることもあります。ピンポイントで大きな残業が発生するのはどんな業種でもあります。
ブラックという言葉が現在独り歩きをしているというのも事実になりますので、求職活動をするときはちゃんと口コミや転職サイト、エージェントといったところから正確な情報を得ることが大切になります。
IT業界で働く楽しみ
IT業界にはブラックなイメージこそありますが、実際に働いている身や周りのIT従事者に話を聞くと「楽しい」、「やりがいがある」という声が大多数であり、実はこれらの声の方が「ブラック」という回答数を大きく上回っています。
では楽しいと感じられるときや、IT業界に於いてのやりがいはどういったことなのかを記載します。
IT業界にもホワイト企業は多い
ブラックなイメージが強いIT業界にも実はホワイト企業はかなりの数存在します。
社員に残業させることを良しとせず、残業は20時間未満に抑えるように指示したり、無茶な案件は断ったりして公私のバランスを図っています。
そういった会社は社員の仲もよく、プライベートでも一緒に遊びに行く社員が多かったり、技術情報の交換であったり、上司が社員を厳しく評価するのではなく、社員間でお互いを厳しく見てアドバイスを送り合うことで切磋琢磨するという風潮があります。
またそういった会社は若手の競争意識が高く、管理職であっても下からの突き上げが強いので常にスキルをベースアップさせることで、優秀な人材が多く揃っています。
ブラック企業では「仕事は辛いものだ!だから給料がもらえる」という意識を植え込まれますが、ホワイト企業では「社員が笑顔で仕事をするから会社は儲かる。だから給料は社員への還元だ」という考え方を持っているのも大きな特徴です。
そういった企業に入ることが出来れば仕事を楽しみながら、ビジネススキルを学び、またエンジニアとしても大成することができるようになります。
作ったものが動く達成感
プログラマ、エンジニアに仕事が一番楽しいときはどのような時かと聞くとおそらく80%以上の人が「作ったものが動いた時の達成感」と答えます。
実際にこの達成感というのはIT業界のみならず存在しますが、IT業界の場合はリリースして動作したときの達成感は物凄い快感です。中には「この達成感が病みつきになって他の業種にはいけない」という人も少なからずいます。
仕事として物を作っているときは、思ったように動作しなかったり、不具合が多数出て上司やお客様から厳しい言葉を受けることもあります。実際に楽しいと感じるよりもストレスを感じることの方が多いです。それを乗り越えた上で動作してお客様から高評価を得たときの達成感はとてつもなく大きなものがあります。
これは主観ですが、数回厳しい言葉を浴びせられただけで現場異動を申し出たり、退職をする人もいますが、正直「勿体ない」と感じます。
達成感というといきなりゴールを見ようとしてそれで挫折する人が多くいるのがIT業界の特徴の一つではありますが、ゴールとは小さな達成感の積み重ねでしかありません。
「この画面が動いた」「このボタンが動いた」「このデザインは秀逸だ」この小さな達成感の先にリリースというものがあり、大きな達成感が生まれます。
いきなりゴールを目指すことは悪いとは言いませんが、コツコツと小さな達成感で幸せになれる人はIT業界に向いているのかもしれません。
IT業界に10年以上在籍した身でありながら、各フェーズや小分けの達成感というのは今でも幸福感を与えてくれるものです。
実は物凄く仲間意識が強い
IT業界やプログラマというとコミュニケーションが苦手であったり、ただパソコンに向き合っているだけというイメージを持たれますが、実は物凄く仲間意識が強いです。
プロジェクトというのは色々なフェーズがあり、要件定義や設計、開発、テスト、リリース、保守と簡単に挙げただけでこれだけあります。
それぞれのフェーズで活躍する職位が異なり、要件定義ならシステムエンジニアと営業、設計ならシステムエンジニアとプログラマなど色々な人と接点を持つことになります。
「私はプログラマなのでプログラムだけ書いている」というのは有り得ません。仕様が分からなければシステムエンジニアに相談したり、要件まで確認したければ営業や場合によってはお客様まで話を持っていることもあります。
ブラックなプロジェクトを除き、かなりのプロジェクトでは、お客様、営業、システムエンジニア、プログラマ、テスタを含めて一つのチームと考えています。
そのため、誰かのミスを別の人がカバーしたり、お客様と仲良くなったら今度は営業を飛ばして相談を受けたり、営業からお客様への新機能の提案の相談を持ち掛けられたりすることもしばしばあります。
そこから新しいビジネスが生まれたり、多少の失敗ではお客様もフォローしてくれたり、良好な関係を築くことができるのもIT業界の特徴の一つです。
プログラマが苦難を抱えているとき、システムエンジニアもお客様も同様に苦難を抱えていることが多いです。そういった苦難を共に乗り越えるという考えが強いためこの仲間意識が強くなります。
まとめ
IT業界には確かにブラックな一面があるのは現実問題としてあります。
しかし、「IT=ブラック」と一括りに決してしないでください。
ホワイト企業がブラック化したり、ブラック企業がホワイト化することも決して珍しい事ではありません。
現在は働き方改革や三六協定といった残業を排除する動きであったり、2020年1月から世間を騒がせている新型コロナウィルスの問題により在宅、テレワーク、サテライトオフィスなど働き方が柔軟になっていることからIT業界は一つの転換期に直面しています。
この転換期を成功させるのか、それとも会社や業界を衰退させるのかはこれからを担う若い皆さんに掛かっています。
皆さんのエンジニアとしての未来を陰ながら応援しています。